ブロガーと幸福論

はじめに

今、あなたは幸せでしょうか。私たちは誰しもが幸せになりたいと思いながら日々を暮らしています。しかし、幸せとは曖昧な存在で、あまりにも漠然としすぎています。

私たちは、どうすればより幸せになれるのか。幸せになるための具体的な手段があるのか。そもそも、幸福度を測定することなどできるのでしょうか。

そんな幸せを研究するために生まれた学問が幸福学です。幸福の研究は、誰にとっても有益であり、幸福学は人類のための学問と言えます。ここでは、信頼できるデータとともに考察を交えながら、幸せについて考えていきたいと思います。

幸福の定義

私たちは、幸せになりたいと思いながらも幸せの正体を正確には知りません。幸せになるために、お金持ちになろうとしたり、結婚してみたり、仕事を頑張ってみたりします。しかし、そもそも幸せとは何かを説明できる人はあまりいません。

幸せとは何かを説明できなくても、私たちは幸せになるための条件に「お金持ち」になる必要があると直感的に連想します。生きていくためには、どうしてもお金が必要になるため、お金持ちになればなるほど幸福度は上昇すると考えてしまうからです。

例えば、あなたが宝くじに当たったとします。しかし、宝くじに当たることと幸福にはあまり関係がありません。1970 年代にノースウェスタン大学のブリックマン博士が行った、宝くじで 5 万ドルから 100 万ドルを手にした高額当選者の幸福度を調査した研究によると、当選者が並外れて幸せという結果はでませんでした。

正確には、数ヵ月も経つと幸福度はもとの水準にまで戻ってしまい、不運な人と幸運な人とでは幸福度は変わらなくなります。心理学では、このことを馴化と呼んでいます。

宝くじに当選したときは大喜びしますが、時間が経てば次第に慣れていき、いつしか自然にもとに戻っていきます。また、馴化にはネガティブな感情も含まれます。例えば、あなたが事故にあってもう歩けないと知ったときには深い絶望を感じますが、それすらも時間によってもとに戻っていきます。

これは、幸せになるためにはお金持ちになりたいという直感的な考え方とは矛盾します。しかし、内閣府が公開している幸福度に関する研究会の資料によれば、日本の GDP(国内総生産)は伸びていますが、幸福度は横ばいで変化していません。つまり、いくら経済成長しても人々は幸せになれない可能性を示唆しています。これは幸福のパラドックスと呼ばれています。

日本における幸福度の推移
日本における幸福度の推移

収入額や貯金額といった客観的幸福で人が満たされることはありません。自分自身の心の中にある主観的幸福で幸福を実感しない限り、人は幸せになれないと言われています。

客観的幸福とは、収入額や貯金額、社会的地位、定住している国は安全であるかなどの指標で測定するものです。一方、主観的幸福とは、アンケート調査を実施して回答を統計的に処理することで測定するものです。アンケートには様々な種類がありますが、有名なものにイリノイ大学のディーナー教授が考案した人生満足尺度があります。

人生満足尺度とは 5 つの質問に答えることによって、人々の本質的な幸福度を客観的に測ることができるものです。以下の 5 つの質問に「まったく当てはまらない(1点)」~「非常に当てはまる(7点)」までの 7 段階で評価します。

  1. ほとんどの面で私の人生は理想に近い
  2. 私の人生はとても素晴らしい状態だ
  3. 自分の人生に満足している
  4. これまで自分の人生に求める大切なものを得てきた
  5. もう一度人生をやり直せるとしても、ほとんど何も変えないだろう

ディーナー教授によれば、合計 30 点以上の人は非常に人生の満足度が高く、すべての面でうまくいっていると感じている人だといいます。25 ~ 29 点の人は、だいたいにおいて人生が順調な人。20 ~ 24 点の人は、平均的な人生の満足度です。点数が下がれば下がるほど、人生に不満が多く、幸福度は低くなります。

それでは、幸福とは一体何なのでしょうか。多くの言語では喜びや楽しさなどの一時的な気持ちと、充足感や安心感などの持続する感覚を区別します。つまり、幸せとは絶対的な状態ではなく、暗に期待値との比較、あるいは他人が持っているものとの比較が込められています。

このような考察を手がかりにすると、幸福という概念は、その含みの度合によって分類することができます。ニューカッスル大学のダニエル・ネトル博士は、幸せを以下の3つのレベルに区別しています。

幸福の3つのレベル
幸福の3つのレベル(ダニエル・ネトル著「幸福の意外な正体」)
レベル1の幸福
もっとも直接的で表層的な意味の幸福とは、喜びや楽しさといった感情や気持ちに関わるものです。何か好ましい状態が(予期せずに)得られたときにその気持ちが起こりますが、そのような気持ちは一過性のものです。
レベル2の幸福
生活を送っているとき、快感と苦痛のバランスを長い目でみたとき、自分はより好ましい状態にあると感じる状態です。ただし、レベル2の幸福はポジティブな瞬間の総和から、ネガティブな瞬間の総和を差し引いたものより、もっと複雑なプロセスになります。
レベル3の幸福
レベル2の幸福より、もっと広い意味の幸福を指します。これはアリストテレスが定義した、良く生き、良く行為する最高善の幸福(エウダイモニア)の考え方です。最高善である幸福(エウダイモニア)は、人間を人間たらしめる至上の価値です。それは、人間にのみ備わった理性の活動の完成によって実現します。理性の活動とは、人間としての徳(アレテー)の追求であるとしています。

幸せには持続性が低いものと、高いものがあります。持続性が低いものは地位財、持続性が高いものは非地位財と呼びます。

地位財とは、個人の進化・生存競争に関わることで、例えば所得、社会的地位、物的財などがあります。

非地位財とは、個人の生活(安全)にかかわることで、例えば良質な環境、健康、自主性、自由、愛情、自己肯定感などがあります。また、非地位財には環境要因、身体的要因などがありますが、多くは心的要因が占めます。

慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科の前野隆司教授によると、心的要因には統計的に以下の4つの因子があると言います。

自己実現と成長
自尊心、自律性、思想宗教、社会の要請、将来への希望、個人的成長、親切、勤労意欲、目標の明確性、人を喜ばせる、満喫、自己受容。
つながりと感謝
人を喜ばせる、感謝傾向、親切、愛情、ユーモア、積極的な他社関係、満喫、将来への希望。
前向きと楽観
楽観性、自己受容、心配事がない、気持ちの切り替えが得意。
独立とマイペース
自己概念の明確傾向、社会的比較志向のなさ、心配事がない。

収益と幸福度

「幸せはお金では買えない」と言います。しかし、お金がたくさんあれば嫌な仕事もする必要がありませんし、旅行にでかけたり、美味しいご飯を食べることもできます。

ブロガーの中には、アフィリエイトやアドセンスによって収益を得ているブロガーもいます。収益を公表しているブロガーもいますが、その中にはサラリーマンの平均所得を大きく上回る場合もあります。大きく稼いでいるブロガーは、はたして幸せなのでしょうか。もちろん一生懸命、ブログを書いても何の収益も発生しないブロガーよりかは幸せかもしれません。

インフルエンサーや有名なブロガーたちは、自分たちの収益を公開することで、まだブログを始めていない人たちにブログを書くことを勧めてきます。一部には、会社を辞めてまでブログに専念するように唆す人たちもいます。

ブログで生計を立てることは、非常に難しくリスキーです。しかし、それでもブログで収益化に成功した場合は、好きなことで生きていけるため幸せになれるのでしょうか。

以下は、内閣府が公開している世帯年収と幸福感のグラフです。世帯年収が高いほど、幸福感が高くなる傾向にありますが、比例関係はありません。

世帯年収と幸福感
世帯年収と幸福感

同じ資料には、「幸福感を判断する際に重視した事項」のグラフもあります。そのグラフの1位には「家計の状況(所得・消費)」がありますが、注目すべきは4位の「精神的なゆとり」です。

アフィリエイトにしろ、アドセンスにしろ、いつまでも収益を約束してくれるわけではありません。Google アルゴリズムのアップデートによって、明日には収益がゼロになる可能性すらあります。これは Google に限ったことではなく、他のプラットフォームであっても同様です。

命綱を誰かに握られた状態、つまり不安定な収益に生活を依存してしまうのは、精神的にキツイものがあります。そのため、大きく収益をあげている専業ブロガーは、華々しく見えてしまいますが、内心は常に不安と戦っているのではないかと思います。そのような状態で幸福感を感じているのかは、疑問が残ります。

インフルエンサーと幸福度

インフルエンサーは多くのフォロワーを抱えています。社会的交流の多いインフルエンサーは、はたして幸せなのでしょうか。それとも、人間関係のストレスの方が多く不幸せなのでしょうか。

ほとんどの人間は、良好な対人関係を築くことで人生が豊かになると、多くの研究が結論付けています。ただし、社会的交流に関する多くの研究は、現実世界を対象に実施された問題があります。そのため、SNS などのオンライン上でのつながりでも同じ結果が得られるとは限りません。

実際、SNS の中でも Facebook を利用している人たちは幸福度が下がる先行研究があります。インターネットに費やす時間が増え、有意義な活動に費やす時間が減ったり、他人と自分を比べて卑下するために自尊心が傷つくなどのネガティブな効果が報告されています。特に自他の比較は、人間の行動に大きな影響を及ぼします。SNS では実生活のもっとも好ましい部分を披露する傾向があるため、他者の投稿に比べて自分の生活は劣っていると考えてしまいます。

インフルエンサーは、多くのフォロワーを抱えているために一般のユーザよりも、より多くのエンゲージメントを獲得します。その中には、好意的ではないコメントやリプライなども存在します。また、不用意な発言によっては炎上にまで発展するケースも珍しくありません。

そのような利己的なコミュニティでは、インフルエンサーがどのように振る舞っていても幸福度は高くありません。インフルエンサーは、自分の社会的地位を崩さないために平静を装っている場合があるため、判断がしにくいかもしれません。

しかし、形成しているコミュニティが不幸せであれば、その中心にいるインフルエンサーも不幸せである可能性が高くなります。その理由は、次のコミュニティと幸福度で説明します。

コミュニティと幸福度

私たちは、様々なコミュニティに属しています。家族、友人、社会、国、さらには SNS によって広大な社会的ネットワークでつながっています。

イェール大学のニコラス・クリスタキス教授の研究によると、広大な社会的ネットワークを通じて直接付き合いのない他人からでも様々なことが伝染することがわかっています。例えば、ネットワークを通じてつながっている人には、肥満や喫煙習慣、投票活動にも影響を及ぼすケースがあることがわかっています。そして、幸福や不幸も伝染することを突き止めました。

以下の図は、人と人とのネットワーク図です。黄色は幸せ、緑色は普通、青は不幸せな人を表しています。1996 年と 2000 年に調査が行われていますが、注目するべきポイントは幸せな人の周辺には幸せな人が集まり、不幸せな人の周辺には不幸せな人が集まっていることです。

Happiness clusters in the Framingham social network
Happiness clusters in the Framingham social network

つまり、幸せなコミュニティに属している場合、その人は幸福である可能性が高いということです。逆に不幸せなコミュニティに属している場合、直接の付き合いがないにも関わらず、不幸になる可能性が高くなります。

家族などの変えることが難しいコミュニティもありますが、SNS などのコミュニティは簡単に変えることができます。もしも、あなたが属するコミュニティの人たちが利己的である場合、あなたはそのコミュニティを離れた方がいいかもしれません。

ブロガーの幸福とは

自分の好きなことを好きなように書き続けられることは幸せなことです。しかし、多くのブロガーは途中で書くことをやめてしまいます。

ブログを書くためには、サーバ代などのコスト以外にも、自由や時間も大きな制約を受けます。それでもブログを書く理由や動機は、お金を稼ぐためや、フィードバックによる評価の獲得、コミュニケーションや情報の整理、純粋に文章を書くことが好きな人や、ストレス解消のためなどです。つまり、自分にとって何かしらのインセンティブが発生することが、ブログを書く大きな理由です。

ブログの 90 % は数年以内に何かしらの理由でインセンティブが失われています。インセンティブが失われたブログは放置されるか、サイト自体が閉鎖されています。インセンティブが失われた主な理由としては、トラフィックの低下、他者との比較による自己嫌悪感、初心や目標の喪失などが挙げられます。

ブロガーとしての幸福を感じるためには、まずはブログを運営し続けるためのモチベーションを確保しなくてはなりません。そのモチベーションとは、ブロガーとしての幸福の意味を見つけることです。

幸せとは期待値との比較、あるいは他人が持っているものとの比較が込められています。上述したとおり、地位財(収益や社会的地位など)は、一瞬の喜びをもたらしてくれますが、そのような幸せはすぐに慣れてしまい長続きしません。ブロガーが幸せになるためには、まずは他者との比較以外に幸福の意味を見出す必要があります。

それでは、ブロガーの幸福とは何でしょうか。ここまで見てきた考え方を手がかりにするならば、読者であるユーザのために誠実なブログを運営し続けることです。つまり、ユーザのために尽くす利他的な行為を心がけ、その中でつながっていくブログ仲間に感謝し、その過程で自己実現と成長を繰り返すことです。誠実さについては、ブロガーの正しい資質とはの記事もあわせて参照してください。

そのようなブログにするためには、ブログの使命や目標を明確にすることです。例えば、ブログでお金を稼ぐためだけに他のブログと何も変わらない情報を発信しているだけでは、遅かれ早かれモチベーションが尽きてしまうでしょう。しかし、あなたのブログが何かしらの社会的使命を全うするために書かれたものであれば、他者との比較によってモチベーションが下がることはないはずです。

あなたのブログは、ただ雑記を発信するためだけに書かれたものでしょうか。それとも、お金のためだけではなく、ユーザ、あるいは社会的問題を解決するため何かしらの使命や目標が定められているのでしょうか。

ブロガーの幸福とは、人生を幸福にするための幸福論と大きく変わりません。あなたが何かしらの信念を持って、誰かを幸せにしようとしている限り、誰もあなたの幸せを邪魔することはないでしょう。ブロガーは、その手段がブログという形で世の中に情報を発信しているだけです。ブログ以外の手段を用いていたとしても、利他的な行動を取る人たちは常に幸福を追求し、人間としての徳の追求をしています。

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