ブログにおけるランチェスター戦略

ランチェスター戦略とは

ランチェスター戦略とは、弱き者が強き者に勝つための戦略のことです。もともとランチェスター戦略は、イギリス人の航空工学の研究者 F.W.ランチェスター (1868 〜 1946) が第一次世界大戦時に提唱した弱者が強者に勝つことを目的とした戦争のための戦略です。その戦略では兵隊、戦闘機、戦車などの兵力の数と、武器の性能が戦闘を支配すると考えられています。今日で使われているランチェスター戦略は、戦争のための戦略ではありません。日本のマーケティングコンサルタントである田岡信夫 (1927 ~ 1984) がランチェスター戦略をもとに提唱したマーケティング戦略であり、弱者がいかにして強者に勝つかの方向性は変わっていません。

ライバルと競争をした場合、一般的には強き者、または大きな者が勝利を収めます。そのため、ランチェスター戦略は、一般常識とは矛盾するようにも感じます。強き者が勝利することは理解しやすい事例ですが、一方で過去から現在までに弱き者が勝利した事例も数多くあります。それではライバルに比べて規模やリソースが小さく、力関係などの競争条件が不利であっても勝ち残っていくには、どのようにすれば良いのでしょうか。よりテーマを具体的にするため、ここではサイトの規模、技術力、経験、品質、信頼性、検索順位などがライバルサイトよりも劣っている場合、ランチェスター戦略をどのように応用すれば良いのかを考えます。

ランチェスター戦略には1対1で戦う第一法則と、n対nで戦う第二法則の2つの法則があります。ただし、本ページではブログにおけるランチェスター戦略について述べます。そのため、1対1で戦うランチェスターの第一法則がメインとなるため、そちらを主軸に説明します。

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ランチェスター 第一法則

ランチェスターの第一法則は、以下のとおりです。

戦闘力 = 武器効率 × 兵力数

M0 - M = E (N0 - N)

  • M0:味方の初期兵力数
  • M:味方の残存兵力数
  • E:武器効率
  • N0:敵の初期兵力数
  • N:敵の残存兵力数

例えば、同じ武器効率で兵力数が 6 vs 4 では、戦闘力もそのまま 6 vs 4 になります。

この法則は、一騎打ちや局地戦、接近戦などの原始的な戦いの場合を表します。同じ兵力数なら武器効率が高いほうが勝ち、同じ武器効率なら兵力数が多いほうが勝つシンプルな法則です。それでは公式に登場する武器効率と兵力数を、私たちのブログに置き換えるとどうなるでしょうか。

武器効率はブログの質、または商品力に相当します。ブログの質を高めるためには、あなたの強みをコンテンツに置き換えます。ブログとしての強みは、経験、知識、記事の品質、サイト性能、情報の信頼性、価格、ソリューション、フロー型、ストック型などです。ブロガーとしての強みは、知名度、好感度、信頼度、フォロワー数などです。強き者であっても、それらすべての武器効率が最大であることはありません。ある分野は得意でも、ある分野は苦手であることは良くあります。ランチェスター戦略で勝負するべきポイントは、強者の苦手分野であり弱者の得意分野です。それは、他者のブログと異なる特徴 (差別化) になり、あなたのブログの競争力となります。

あなたのブログが、どのような強みと弱みを持つか分析するフレームワークとして、SWOT 分析があります。SWOT 分析は、Strength (強み)、Weakness (弱み)、Opportunity (機会)、Threat (脅威) をそれぞれ内部要因、外部要因、プラス要因、マイナス要因の切り口から分析したものです。例えば、murashun.jp の SWOT 分析は以下のとおりになります。

murashun.jp の SWOT 分析
murashun.jp の SWOT 分析

あなたのブログは何を売りにするかによって、今後の集客効率が大きく違ってきます。例えば、更新頻度は遅くても高品質な情報を毎回投稿するブログであれば、ユーザが何かの情報を参照する場合、あなたのブログが第一候補になりえます。逆に、文字数が少ない記事であったとしても更新頻度が速ければ、何かのイベントやニュースがあれば、ユーザはあなたのブログを確認するために訪問するようになります。

ランチェスターの第一法則を利用した具体例としては、全国のおすすめスポットを紹介している大手サイトに対して、地域のおすすめスポットを紹介している個人サイトがあります。個人で全国を飛び回り、おすすめスポットを紹介することは困難ですが、地元のスポットだけに絞り込み、詳細に紹介することは不可能ではありません。大手サイトのように広範囲をカバーできなければ、局所的であってもその分深くすれば、戦いやすくなります。

テーマを絞るときのコツは、大きなテーマから絞ってください。最初から小さなテーマをより細かく絞ってしまうと、ニッチなテーマになりすぎて、誰からの需要もないテーマになってしまいます。逆に人気のある大きなテーマでは、絞ったテーマの先でも大きな専門サイトなどがあったりするため、注意が必要です。

ゼロから始める技術書執筆 by 湊川あい from Ai Minatogawa

湊川あい先生は、この法則を AND の才能と位置付け、誰にでも一流になれるチャンスがあると説明されています。誰しもが何かしらの得意分野を持っていますが、それ単体では日本一にはなれません。しかし、それらを組み合わせることで競争力が生まれます。

兵力数はブログの量、または販売力に相当します。個人ブログであっても、長い時間をかけて 100 記事以上書いているサイトもあります。しかし、大手サイトではそれ以上に膨大な数の記事があるため、個人ブログでは量的側面からでは敵わないと思いがちです。ところが、個人サイトが大手サイトの記事数に対して対抗するためには、2 つの切り口から攻めることができます。

ひとつは、オリジナリティを加えやすいことです。大手サイトは、組織化されているために個性的な記事を嫌い、無難にまとめる傾向があります。テーマを独自の切り口で分析、評価することは、あなたのブログにオリジナリティを与えます。鋭い分析や、深い考察、公正な評価以外にも、詳細なデータや図解、分かりやすい漫画や動画、面白いアイデアや企画などもオリジナリティを獲得することに役立ちます。オリジナリティは固定のファンが付きやすく、リピーターとしての集客、および SNS 上で拡散する宣伝の効果が期待できます。

もうひとつは、記事の更新頻度に制約がなく、情報が枯れないストック型の記事を書きやすいことです。大手サイトでは、頻繁な記事の公開や更新が求められるため、比較的情報の鮮度が落ちやすいフロー型の記事を量産している傾向にあります。フロー型の記事は、情報の鮮度が落ちてしまうと集客能力がなくなります。そのため、私たちは情報の頻度を落としてでも、情報が枯れないストック型の記事を書く選択肢があります。ストック側の記事は、長い期間にわたって検索流入のトラフィックが期待できます。

ここまで説明したブログにおけるランチェスター戦略を、より詳細に解説している書籍「Google AdSenseマネタイズの教科書[完全版]」があります。この書籍の Chapter_5 には、ランチェスター戦略を考慮した上で具体的にどのようなサイトを構築するべきかが解説されています。興味のある方は、書店や Amazon で探してみてください。どのような本であるかは、以下のリンクに書評がまとめられていますので、参考にしてください。

Chapter_5 の情報のみ欲しい方は、以下の書籍にも同じ情報が掲載されているため参考にしてください。

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弱者と強者の戦略

弱者の戦略と、強者の戦略は根本的に違います。基本的に弱者の戦略は差別化戦略であり、強者の戦略はミート戦略と言われています。戦略の説明は後述しますが、これは真逆の戦略であると言えます。

弱者の差別化戦略は前述したとおり、オリジナリティや質的、または量的な優位性です。ただし量的な優位性は、ストック型の記事に限られるなど、限定的であることに注意してください。

基本的に弱者が取るべき戦術は差別化戦略ですが、しばしば戦略の選択を失敗してしまうケースがあります。それは、強者を追随する戦略です。弱者は強者がターゲットとしている人、モノ、場所、サービスにはマーケットがあるはずだと考え、強者の模倣しようとします。俗に言うコバンザメ商法と呼ばれるやり方です。

この戦略でも、マーケットからある程度の成果は獲得できます。しかし、その成果はわずかであり、マーケットが成熟するにつれて利益なき戦いを強いられることになります。この戦略は、ランチェスター戦略とは対極に位置する戦略であり、弱者は取るべき戦略ではありません。

一方で強者の戦略は模倣戦略であり、ランチェスター戦略ではミート戦略と呼んでいます。差別化している特徴を模倣し、すべてを同じように見せてしまう戦略です。差別化の度合いが小さくなるにつれて、ユーザにはすべてのものが同じように見えてしまいます。違いが分からなければ、ユーザはより大きな方へと流れていくため強者が勝つことになります。つまり、弱者の差別化戦略を無効にする戦略が、強者の行うミート戦略になります。ただし、短期間でミート商品を投入することは、相応の技術力や資金などのリソースが必要になります。

強者のミート戦略の前には、弱者の差別化戦略は役に立たないものだと感じます。しかし、ランチェスター戦略における差別化には、以下の5つの原則があります。

  • 簡単にミートされる差別化は差別化ではない
  • ユーザに評価されない差別化は差別化ではない
  • 差別化は掛け合わせることで相乗効果を生み出す
  • 自業界の非常識は他業界の常識
  • 信念のない小手先の技術は通用しない

これらの原則を考えると、弱者の差別化戦略とは、強者のミート戦略に対抗するための差別化戦略であると言えます。

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弱者が取るべきランチェスター戦略の結論

前述したランチェスター戦略の特性から、弱者が取るべき戦略は具体的にどのようなものかが見えてきました。弱者が取るべきランチェスター戦略の結論は、差別化した分野でのナンバーワンを目指すことです。経営戦略で言うところの選択と集中です。限りある時間や自由などのリソースを、自分の得意分野に集中させてナンバーワンを目指します。ナンバーワンを目指すためには、より効率的な方法を選択したり、ツイッターや Youtube もある程度は我慢しなくてはならないかもしれません。誰でも簡単に真似できてしまう差別化は、差別化ではない点を思い出してください。誰にも真似できない差別化を行うためには、それなりの時間や労力が必要になります。

差別化は、他者が真似されにくいほど良いとされています。例えば、地域のおすすめスポットを紹介する場合、ただ写真を撮るだけではなく、郷土資料から歴史や所以を調べたり、当事者や関係者へのインタビューなども有効です。差別化された分野でのナンバーワンを目指す場合、2位以下を大きく引き離しての1位になる必要があります。

2位以下とは僅差の1位と、2位以下を大きく引き離した1位では、同じ1位でも意味が異なります。僅差である場合、順位の入れ替わりの可能性があり激しい消耗戦になる可能性があります。差別化による棲み分けを明確にするためには、2位以下を大きく引き離した1位を目指す必要があります。大きく引き離した場合、2位以下は追従することを諦める傾向があります。ランチェスター第一法則の場合、目安として2位とは3倍以上の差があれば、追従されにくくなります。

差別化した分野でナンバーワンを目指す場合、自分の順位と1位までの距離を確認します。自分が1位である場合、2位までの距離を確認します。つまり、追従できないほどのナンバーワンを目指す場合のゴールを設定します。例えば、記事の品質や信頼性を上げたり、UX/UI のデザインを整えたり、個性的なキャラクターで記事を量産したりするなどです。具体的なゴールを設定したら、次は到達可能な具体的なプロセスを考えます。それらを地道にこなしていくことで、現実的にナンバーワンになれる可能性が大幅に上がります。

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まとめ

ブログにおけるランチェスター戦略とは、得意な分野において差別化を行うことです。この戦略は自体は単純なものですが、実現するまでのプロセスは単純なものではありません。得意分野の見極め、テーマの選別、独特のアイデアと切り口、ユーザビリティを損なわないデザインの考案など、やるべきことはたくさんあります。使える時間は有限であり、何を優先して着手するかは重要な選択です。

戦略とは大きな方向性を決める存在であり、個々のプロセスを効率化することは戦術に分類されます。そのため、戦術は失敗しても巻き返しがききますが、戦略の巻き返しがききません。ランチェスター戦略は、ブログ弱者のための選択肢のひとつにすぎません。重要なポイントは、どのような戦略であっても方向性を間違えることは許されないため、じっくり時間をかけて検討することです。