Web サイトの情報アーキテクチャ

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Web サイトの情報アーキテクチャの重要さ

Web サイトを作る上で最初に解決するべき重要な問題のひとつに、情報アーキテクチャ (ディレクトリ構造などの情報の分類) の検討があります。www ディレクトリが公開ディレクトリである場合、一般的な Web サイトのディレクトリ構造の例は以下のようなものがあります。


/www
 |-- /css
 |    |-- style.css
 |
 |-- /img
 |    |-- logo.png
 |
 |-- /js
 |    |-- script.js
 |
 |-- index.html
 一般的な Web サイトのディレクトリ構造

Web サイトのディレクトリ構造の決定は以下の 3 点において重要な意味を持ちます。

  1. 情報の "見つけやすさ" と "探しやすさ" (ファインダビリティ)
  2. Web サイトの規模が大きくなった場合の拡張性 (スケーラビリティ)
  3. 公開したページのパーマリンクと被リンク

ファインダビリティはユーザビリティに勝るという言葉があります。どれだけ洗練されたユーザビリティを実装しても、情報に辿り着くことができなければ意味がないためと言われているのが所以です。これは、情報アーキテクチャと言うより SEO の分野に近くなりますが、サイト内のディレクトリ構造を整えることは管理や運用コストを下げるだけでなく、ユーザやクローラにも良い影響を与えます。


Web サイトを大きく育てていく場合は、今後の拡張性について考慮するべきです。例えば、公開ディレクトリ直下にすべての HTML ファイルを格納すれば早い段階で収集がつかなくなります。これは PC のデスクトップにフォルダ分けをせず様々なファイルを置いていく様子に似ています。今後の拡張性を考えるならば、一定のルールやポリシーに従ってディレクトリを配置し、一度構造を決めたら変更は行わないようにしましょう。


もしも公開ページが含まれるディレクトリが、何かしらの事情で変更を余儀なくされる場合は、その影響について知っておくべきです。公開ページのディレクトリが変わると、(必ずしもそうではありませんが、一般的には) URL が変更になります。URL が変更になった場合、サイト内外からのすべての被リンクが影響を受けます。その結果、対象の URL が見つからずに 404 エラーが返されます。その他にも検索エンジンのクロールエラーが発生したり、SNS で獲得した被エラーがすべて無効になるなどの影響も含まれます。


ページを公開した後は、可能な限り変更しない方が良いでしょう。Web サイトのリニューアルなどに伴い、大幅にディレクトリ構造を変えた例もありますが、Web サイトの構造を整理できるメリットの代償として、大きなデメリットを受ける可能性があります。


ここでは "ユーザが情報を探しやすいように作る" 情報アーキテクチャについて考えます。

情報の分類

情報の分類方法は様々な方法があり、考え方の違いによっても大きく異なります。例えば、他人の PC を操作した経験がある人は、アクセスしたい目的のファイルがどこに分類されているのか迷子になったことはないでしょうか。情報を分類して整理するということは簡単そうに見えて、実は非常に難しい問題なのです。


例えば、多くの情報を所蔵している図書館では、どの図書館でも情報がある程度決められたルールで整理されています。そのため、初めて訪れた図書館でも読みたい本がどの棚に置かれているのか、それほど迷わずに到達することができます。


Web サイトで情報を分類するときもこれと同じ問題に直面します。ただし、情報の分類方法はひとつではないため、Web サイトの特性に合わせた分類方法を選択しなければユーザは混乱するでしょう。分類方法には "正確に情報を分類するパターン" と "曖昧に情報を分類するパターン" の 2 種類があります。それぞれのパターンはどのようなものか順番に見ていきましょう。

正確に情報を分類するパターン

情報が正確に分類されたパターンでは、初めて見る場合でも情報がどこに分類されているか簡単に理解できるパターンになっています。例えば、国語辞典や電話帳などの "あいうえお順" になっているパターンなどが該当します。これは "既知項目検索 (Known-item search)" と呼ばれ、何が必要か分かっており、それを言葉で表現でき、どこから探し始めればよいか明らかである場合に有効です。情報を正確に分類するパターンでは、情報を分類するための曖昧さはなく、設計や保守も比較的簡単になります。

アルファベット順

英語圏では "アルファベット順" のみですが、日本語圏では "あいうえお順" と "アルファベット順" の両方が使われます。そのため、しばしば一般的に使われている英語の用語を探すときは、カタカナの項目を探せば良いのか、アルファベットの項目を探せば良いのか迷う場合があるため、厳密な意味での曖昧さを排除しきれませんが、アルファベット順は正確に情報を分類するパターンに属します。

時系列順

プレスリリースのニュースなどでは時系列順でまとめられており、最新の情報が上位に掲載されるようになっています。その他にも、歴史の本、日記、TV の番組表、雑誌のバックナンバーなどは、時系列順での分類が適している情報であると言えます。

曖昧に情報を分類するパターン

アメリカの図書館学者メルヴィル・デューイが 1873 年に創案した "デューイ十進分類法" という以下の 000 ~ 900 まで大別する図書分類法があります。1876 年に初版が公刊され現在では以下の分類になっています。

  • 000:コンピュータサイエンス、情報および総記
  • 100:哲学および心理学
  • 200:宗教
  • 300:社会科学
  • 400:言語
  • 500:自然科学および数学
  • 600:技術
  • 700:芸術
  • 800:文学および修辞学
  • 900:歴史および地理

アメリカでは公共図書館の 95 %、大学図書館の 25 % で使用されていますが、日本では洋書に対して公共図書館で 1 %、大学図書館で 5 % に留まるため、見たことがない方もいるかもしれません。このような、曖昧に情報を分類するパターンがアメリカの図書館で広く採用されている理由は、自分が何を探しているのか探している本人すらよく分かっていない場合が多いためです。ぼんやりした情報しか手がかりがない場合、曖昧に情報を分類するパターンは正確に情報を分類するパターンに比べて便利だと感じる場合があります。


曖昧に情報を分類するパターンでは、作業が大変で内容の分類も困難ですが、正確な情報を分類するパターンよりも高い価値をユーザに提供できる場合が多いのです。曖昧な情報を分類するパターンが成功するかどうかは、分類の質と個別項目の配置にかかっており、厳密なユーザテストが必要になります。多くの場合、情勢の変化に伴って出現する新規項目の分類に対して、既存項目のメンテナンスをすることになります。では、曖昧に情報を分類するパターンには何があるのかを見ていきましょう。

トピック

情報をテーマやトピック毎に分類することはユーザに大きな価値を提供しますが、作り手側からすると非常に厄介な分類方法になります。トピック毎に分類しているサイトは多くありませんが、大半のサイトでは検索機能によりサービスを提供しています。例えば、Wikipedia などの百科事典に見られる体系では、広範囲のわたって知識に関する情報が網羅されています。


トピックによる分類を行う場合、範囲を広く定義することが重要です。ユーザがサイト内検索によって期待するコンテンツを見つけられるように全体を設計するようにしましょう。

タスク

タスクの分類方法では、コンテンツやアプリケーションをプロセス、機能、またはタスクの集合にまとめることができます。この分類方法は、ユーザが実行しようとしている優先度の高いタスクが少数しかない場合に適しています。例えば、Office の Word、Excel などのリボン形式にまとめられたタスクなどが一般的な例です。


Web サイトでのタスク指向の分類は、ユーザがいくつかの操作を行う Amazon などの電子取引サイトなどで見られます。電子取引サイト以外でも Web サービス、またはアプリケーションなどでもタスク指向の分類方法が適しています。

ユーザ

Web サイトに訪問するユーザ層が複数存在する場合や、多くのリピーターが利用する場合は、ユーザ層別の体系が適している場合があります。例えば、Amazon ではユーザの購入履歴や、商品の特性からオススメの商品などの情報が自動的に表示されます。その他にもユーザ別の情報を表示する事例は、Youtube や Google のパーソナルサーチなど多岐に渡ります。


ただし、ユーザ別の分類は、オープン形式である場合とクローズド形式の 2 種類あります。オープン形式の場合は、ユーザが自分を対象にしたコンテンツ以外に、他のユーザを対象にしたコンテンツにもアクセスできます。一方、クローズド形式では他のユーザを対象にしたコンテンツにはアクセスできません。オープン形式の場合は、重要な情報が含まれる場合があるため、公開範囲の設定やセキュリティに関する問題があります。そのため、どちらの形式を選択するかは、サイトの特性によって選択すると良いでしょう。

メタファー

メタファーとは、新しいものを親しみやすいものに関連付けることです。これはユーザビリティを向上させるために、多くはユーザの理解を助けるために使われる手法です。例えば、デスクトップにコンピュータ、フォルダ、ゴミ箱などがインターフェースにメタファーを適用した例になります。ユーザはこれらのメタファーのおかげで、機能を直感的に理解することができます。


メタファーでは、多くの人が直感的に理解しているものに関連付けることが求められます。関連付けられたものが何であるか知らないユーザにとって、そのようなメタファーは役に立ちません。


Web の世界では、このメタファーはモバイルにおけるメニューのアイコンなどに利用されています。モバイルは画面サイズが限られているため、デスクトップほど多くの情報を表示できません。そのため、メニューなどを文字ではなくメタファーを用いたアイコンなどで表現しています。

ラベリング

ラベリングとは、Web サイト上の情報に、"タグ" と呼ばれるラベルを付け、検索できるようにする分類方法です。ラベリングは、一般的にタグ付けを行うこと自体を指しますが、個人の Web サイトであれば管理者がラベリングを行いユーザは変更できません。これに対して、ユーザが情報に対して自由にタグを付けて分類することは "フォークソノミー (folksonomy)" と呼ばれ区別されます。フォークソノミーを導入しているサイトとしては、Flickr、はてなブックマーク、ニコニコ動画、pixivなどがあります。


ラベルの目的は情報を効果的に伝えることです。ただし、ラベルは多ければ良いというものではありません。不適切なラベリングは、ユーザに混乱を与えるだけです。フォークソノミーが発達しているサイトでは、ユーザ自身が考えた言葉による分類がなされ、情報へのアクセスがしやすいものになっているため、参考になるでしょう。

ラベルの設計

ラベルの設計は単純のように見えて非常に難関です。言語自体が曖昧であるため、言葉のゆらぎ (多義性) を排除することができず、類義語、同音異義語の考慮も必要になり、コンテキストが異なれば使う言葉も異なるためです。


ラベリングにおけるガイドラインとしては、"最小単位" と "一貫性" です。ラベルの最小単位では、テーマの範囲を小さくすれば、より明確かつ効果的に情報を表現するキーワードを見るけることができます。ラベルの一貫性では、キーワードの粒度、種類、総合性を考慮しましょう。


ラベリングは正解がないため、難しく考えてしまいがちですが、自動化する方法もあります。WordPress では、コンテンツを分析して最適なキーワードを自動的にタグとして付けてくれるタグクラウドのプラグインがあります。また WordPress のプラグイン以外にも同様のタグクラウドサービスもあります。

トップダウンとボトムアップの検索

ある情報にアクセスする場合、多くのユーザは検索エンジンを利用します。検索エンジンは Web の膨大な情報の中からユーザが探している情報に最も近いページを検索結果に掲載します。このように Web 全体を横断する検索方法は "トップダウン" の検索方式と呼ばれるのに対して、サイト内を横断するラベリングは "ボトムアップ" の検索方式と呼ばれます。


ラベリングは、サイト内における同一のカテゴリに属する情報を分類するための強力なツールです。Amazon などでオススメの商品が表示される仕組みは "協調フィルタリング" と呼ばれるアルゴリズムのおかげですが、ラベリングは協調フィルタリングすら上回る利便性をユーザに与える場合があります。ラベリングの恩恵はそれだけではありません。ブログに代表されるような雑記は情報の分類が非常に難しい場合がありますが、ラベリングを行うことでコンテンツの分類コストを大幅に下げることができます。

セマンティック Web

セマンティック Web とは、Web ページの情報にメタデータを付与して意味を伝えたり、情報の収集や分析などができるようにすることです。近年では、Google がリッチスニペットを利用して検索結果に反映するなどの応用例もありますが、セマンティック Web 自体は普及には至っていません。


セマンティック Web はこれまで紹介した方法とは異なり、ユーザに直接的な影響を与えません。Web ページに埋め込まれたメタデータを Google などの検索エンジンのクローラに対して Web ページの情報を正しく収集・分析・評価させることで、検索を行ったユーザに副次的な効果を与えます。


多くのユーザはトップダウン形式で情報にアクセスすると考えた場合、ある程度の SEO は考慮した方が良いでしょう。SEO については、Google 検索エンジン最適化のページを参照して下さい。

まとめ

Web サイトを構築する方でも、情報アーキテクチャを考える機会に恵まれる方はそう多くいません。一般的には必要最低限の構成だけを決めてスモールスタートで始めますが、規模が大きくなるにつれて構造の歪みが生じてきます。その歪みを修正するために大幅な改造を余儀なくされたり、次回の Web サイトに教訓が生かされたりしています。しかし、情報アーキテクチャは Web サイトの特性によって変化するため、同じテーマを扱わない限り教訓が活かされることはないでしょう。Web サイトを構築する方は今後の展望をイメージして、どのように最適化すれば良いのか考えてみましょう。